平戸の聖地と集落
「春日集落と安満岳」

写真提供:日暮雄一

①平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳)について

①平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳)について

禁教期に組織的にキリシタン信仰を継続した集落と信仰の対象となった山です。キリシタン信仰と並行して、神仏や、安満岳、川の神などの身近な自然を崇敬する信仰形態を育みました。安満岳や神社、仏像などを併行して祀りながら、家屋内に祀られた納戸神や、キリシタン時代の墓地や十字架が存在した山を聖地として守り、密かに信仰をつないできました。
イエズス会宣教師アルメイダの1561年の書簡には、「春日に到着すると、十字架へ続く道は聖体の行列を待ち受けるときのような有様であった」とあり、1562年には「慈悲の組(※)」ができていたことが確認されています。また、発掘調査ではその当時のキリシタン墓の跡が見つかるなど、見た目には分かりにくいのですが、その歴史的な価値を土地に刻んできました。また、安満岳頂上には、寺跡、神社、キリシタンの石碑が存在し、仏教、神道、キリシタン信仰が並行してなされていたことが伺えます。
(※)キリスト教の精神に基づき、病人や貧困者の救済に奉仕した信心会「ミゼリコルディア」のこと。日本では「慈悲の組」「慈悲屋」などと呼ばれた。日本の福祉事業の先駆け。

②春日集落について

春日集落について

長崎県平戸島の西岸にある人口70人ほどの小さな集落です。東側の安満岳から伸びる尾根に挟まれた谷状の地形と、海に囲まれた二つの集落からなっています。
集落は納戸神を有する家屋、美しい棚田、石祠、墓地遺跡、およびこれらを結ぶ里道から構成されています。アルメイダ神父の書簡では「(春日の)教会は清潔で荘厳な場所にあり、海と陸の眺望がはなはだ美しい』ことが書かれており、450年以上昔から今と変わらぬ美しい眺望があったことが分かります。2012年2月22日には「平戸島の文化的景観」として、「春日の棚田」が「国の重要文化的景観」にも選定されました。脈々と受け継がれる農漁村の風景を表す代表的な場所として、海から山間まで続く棚田の景色は圧巻です。
松浦史料博物館に残る江戸時代の絵図と比較しても、16世紀から禁教期を経て、現在にいたるまで集落の景観はほぼ変わらずに維持されていると考えられています。
春日集落の潜伏キリシタンは、19世紀のキリスト教の解禁後もカトリックには復帰せず、かくれキリシタン信仰を継続したため、集落に教会堂は存在しません。現在では、かくれキリシタンの組織は解散しており、信仰は途絶えていますが、末裔の人々が生活をしており、春日集落拠点施設「かたりな」では、その方々の話を聞くことができます。

③春日集落を散策してみよう

春日集落を散策してみよう

春日集落は潜伏キリシタン時代の美しい風景をそのまま残しています。450年以上前からある雄大な自然に人の手で長い年月をかけて作り上げた美しい棚田風景を見学しながら、集落の雰囲気を肌で感じてみませんか?
春日集落の散策マップ散策に便利なレンタサイクル

④安満岳について

安満岳は春日集落の東側に位置し、標高536mの平戸地方における最高峰です。
山域の広い範囲にアカガシの原生林が残り、山中には白山比賣神社とその参道、山頂部には石祠、西禅寺跡などの禁教期の潜伏キリシタンの信仰のあり方に関係する遺構が今も残っています。白山比賣神社は718年に創建され、白山権現とも呼ばれています。山頂には近代に建て替えられた社殿と、江戸時代以前につくられた石の参道や鳥居があり、社殿の後背地には多様な石造物群が見られ、「キリシタン祠」と呼ぶ石祠もあります。参道に隣接する西禅寺跡には、建物の礎石をはじめ、池、石造物などの遺構が残されています。16世紀の宣教師の書簡によると、西禅寺を中心とする仏教勢力が「安満岳」と称して大きな勢力を誇り、宣教師らと敵対していたことがわかります。しかし禁教期になると、在来の神道、仏教に基づく宗教観と潜伏キリシタンの信仰とが重なり、安満岳は神道、仏教、潜伏キリシタンの信仰が並存する聖なる山となりました。春日集落からも安満岳山頂に向けて参道が延び、集落全体の住民にとって崇拜の対象となっていました。禁教期から伝わるとされ、潜伏キリシタンの祈りの言葉である「神寄せのオラショ」においても、安満岳は「安満岳様」または「安満岳の奥の院様」と呼ばれており、安満岳が潜伏キリシタンにとって信仰の対象として重要な存在であったことがわかります。

安満岳へ上る登山道安満岳へ上る登山道(裸足参り)
安満岳頂上から春日集落、生月島安満岳頂上から春日集落、生月島

⑤安満岳の参拝について

 安満岳の頂上に登るには2つのルートがあります。1つは比較的、整備された登山道で駐車場には簡易トイレを設置しており、駐車場から約30分ほどで頂上に到着します。もう1つは、従来の白山比賣神社の参道を登るルートで、一の鳥居から約1時間ほどかかりますが、現在、整備されておらずに非常に荒れた登山道となっております。登山に適した格好で専門ガイドと登山することを推奨しております。